平成20年8&9月號





今朝通信 第31号
『汽笛一声… 上氣嫌』



玉蜀黍


藤森 朗

玉蜀黍

 夏休みの風物詩と云えば、西瓜に玉蜀黍(トウモロコシ)でしょうか。お母さんの茹でた玉蜀黍に塩を振って食べた記憶や、縁日の焼き玉蜀黍の香ばしい香りは忘れられないものです。最近ではバイオマス・エタノールの原料としても注目されています。

 この玉蜀黍は、唐土(もろこし)から伝来した植物故、「トウモロコシ」と呼びますが、紀元前500年頃からメキシコからグアテマラにかけての地域で栽培化されました。しかし、野生の玉蜀黍は絶滅したのか見付かっておらず、近縁野生種のテオシント(ブタモロコシ)から栽培されたのではないかと考えられています。但し、テオシントは食用にならないような小さな実が十粒程度なるだけで、外見も明らかに違うため、二つの種を交配させて作り出されたとする説もあり、よく判っていません。

 コロンブスが新大陸を発見した1492(明応元)年当時、南北アメリカでは既に爆粒種、軟粒種、硬粒種、馬歯種、甘味種等主要な品種は存在したようです。

 キューバから持ち帰られた玉蜀黍はその後、30年間にフランスやイタリア、トルコそれに北アフリカに伝播し、その後、陸路及び海路でインドからチベットを経由して中国にも伝わっています。
 日本へはポルトガル人により硬粒種(フリントコーン)が1579(天正7)年に伝えられ、九州や四国で栽培されました。日本に伝わるまで、凡そ九十年も掛かっているのですね。

 明治初年にアメリカから甘味種(スイートコーン)や馬歯種(デントコーン)が北海道に導入され、それが現在の日本の玉蜀黍の基礎となり、ほぼ一代雑種のみが栽培されています。しかも、ほとんどが甘味種で、特に甘みが強く根強い人気を誇るのが「スーパースイートコーン」、一般に「ハニーバンタム」と呼ばれる品種です。
 甘みが強く長持ちする反面、種皮が厚いため、加工用には向きませんが、焼いたり蒸したり、スープに煮込み、コロッケ等用途は広く愛用されています。
 白粒種のシルバーコーンはハニーバンタムより色が薄く乳白色で小粒なわりに、粒皮が柔らかく、甘味も強いことからサラダにも使われ、蒸しても焼いても美味しい品種です。

 甘味種は通常、果実を未熟状態で食べますが、もぎ取ってから甘味の中心となる糖分が、時間と共に澱粉に変わってしまうため、できるだけ早く茹でた方がいいでしょう。近頃では茹でずに、外皮を一枚残したまま、そのまま切らずに電子レンジで5分程度蒸し焼きにすると、より甘味が感じられて美味しいと評判です。
 ヤングコーン(ベビーコーン)というのもありますが、これは専用品種があるのではなく、主に甘味種の二番雌穂を使い、サラダや煮込料理に使います。

 それ以外の品種はせいぜい完熟させて飼料や工業原料に使われるイメージですが、実を潰せばコーンフレークに、メキシコでは細かく挽き、酵母を入れずに薄く伸ばして焼いてトルティーヤに、イタリアでは煮立った湯に入れて煮ながらこねてポレンタにもなる通り、様々な食べ方があります。
 また、アンデスでは発芽モヤシを長時間煮込んで発酵させ、チチャと云う酒も造られ、アメリカのバーボンウヰスキーの原料としても使われますね。

 その他、種子の胚から食用油やマーガリンが作り出され、茎葉は家畜飼料に、茎の随は均一に燃焼するため爆薬の導火線にも用いられているというから驚きです。
 現在、アメリカでは燃料として注目されたのはよいのですが、価格が急騰し、食糧危機の引き金になりかねず、大豆からの転作も進んではいますが、成長にかなり水を消費するため、一部地域では水資源の不足すら問題になるやっかいな植物でもあります。
 玉蜀黍の雄花序(雄穂)は天辺の茎の先端に十数本の枝柄に分かれて広がって小花となり、雌花序(雌穂)は茎の中程に、何枚もの包穂に包まれた円柱形となります。包葉の先に出た絹糸(玉蜀黍の毛)に花粉が付着して受粉するため、粒一個に必ず一本の絹糸があるわけです。凡そ三週間で大きく育ち、五十日で完熟します。
 必須アミノ酸を殆ど含まない玉蜀黍は、蛋白質の供給源になりませんが、糖分の他、高カロリーでリンや鉄分、ビタミンB1により夏バテ予防にいいかも知れません。




すき焼「今朝」のヒゲ親父の獨り言 gramophonの音戯函